次の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、最も適当なものを1.2.3.4から一つ選びなさい。
自然と人間とを対置して考えてみる時、みかい民族、とくに野生の動植物資源をあつめて、移動しながら生活する採取しゅりょう民の世界では、自然に対する人間の力、つまり生存のための技術の力が弱く、人間は自然の暴威にさらされている。したがって社会結合の単位は小さく。その生活内容も貧しく乏しい。
しかし、これを人間集団の中の人間関係といった面から見ると、夫婦と子供から成る家族的結合は緊密で、肉親の愛情はこまやかだし、戦争も、盗みも、詐欺も、今日の文明社会で考えられているような意味で起こりうる条件は存在しない。
また原始人とか未開人とかいえば、自然の前に無力であるように、さまざまの伝統的な社会力や、神秘な超自然力の支配に屈従し、まじないや祈祷に明け暮れしていると考えるのが、いわゆる文明人の常識である。( ① )人間の技術が低ければひくいほど、人間が自然に対する戦いに弱いことはいうまでもない。
しかし、政治にせよ、流行にせよ、信仰にせよ、人間が超個人的な力のままに支配されている度合は、自然を征服したと誇るわれわれ現代の文明人の方が、原始人よりも大きな違いがあることに大きいのではあるまいか。親しく彼らに接した人類学者たちはいずれも、狩猟採取民の社会では、制度が個人を支配する程度が少なく、社会や文化に対する個人の比重はそれだけ( a )と言う。つまり食料採集民のように、幼稚な技術水準に対応する、単純で小規模な社会結合をもった人間ほど、個人は機械力に隷従する度合が( b )のと同様に、また制度的な価値の拘束をうける程度が( c )、個人のたくましい創意や能力のはたらく余地は、それだけ相対的に( d )というのである。
ところが農耕だの牧畜だのといった多くの新技術の発明によって、いわゆる自然の征服が進めばすすむほど、社会的結合の範囲は拡大し、内部の人間関係も文化して複雑となり、とくに金銭万能の商品生産の社会にいたって、人間は逆に、ますます強い人間外の力に支配されるようになる。いわゆる人間の自己疎外だ。そしてついに、核兵器とオートメイションとマスコミの現代文明の重圧の下では、手段としての機械力が自立化し、個々の人間は文明という巨大な機構の部分品と化して、その( ② )。
問1 ( ① )に入る適当な言葉を選びなさい。
1それとも 2それとなく 3なんとか 4なるほど
問2 ( a )~( d )に入る適当な言葉を選びなさい。
1.(a)大きい (b)多い (c)高い (d)広い
2.(a)小さい (b)多い (c)高い (d)狭い
3.(a)大きい (b)少ない (c)低い (d)広い
4.(a)小さい (b)少ない (c)低い (d)狭い
問3 ( ② )に入る適当な言葉を選びなさい。
1.主体性を失うまいとする
2.個性を失うべきではない
3.全体性を失いがちだ
4.自主性を失ってしまう
問4 本文の内容と合わないものはどれか。
1.原始人は社会的水準は低いが、集団に及ぼす個人の力は大きい
2.原始人は超個人的に支配されているため、社会に対する個人の比重は小さい
3.現代人は制度に縛られ、自己の意志にしたがって行動することが難しい
4.現代人は多くの新技術を開発した結果、自己疎外をひき起こした