年より若く見える人は、実際に、その肉体も若いのか。体力はあるのか。ちょっと気になる疑問だが、ほんとうに、この調査をやった医者がいた。北九州に住むその人から、わたしは直接聞いたのだが、答えは、①その通り、であった。私は他人から、十歳から十五歳ほど若く見られることが多い。それで「灰谷さん、よかったね」という気持ちをこめて、②この話をしてくれたのだろうと思う。
財を誇る人ははしたないように、自分の若さや健康を鼻にかけるのも、よい趣味とはいえない。わたしは心身とも虚弱体質で、自給自足の生活やら、何やらで、年をとってから、望ましい体質に変わった。それがうれしくて、( ③ )自分の健康を人に自慢するようなところがあった。
去年の暮れ、生まれて始めて入院した。過労からくる脊椎の神経圧迫ということだった。神様に叱られたような気がした。世の中には病気で苦しんでいる人がたくさんいるのだ。④いい気だったと自分を恥じた。
そこで、はじめの話しに戻るのだが、若く見える人が肉体も若いという説は、私の住む沖縄・渡嘉敷島の老人には( ⑤ )ようだ。いったいに南島の人にいえることだが、早く老人顔になる傾向がある。しかし、そこからがすごい。物腰は毅然としていて、体全体がしゃっきりしている。そして実際良く働く。畑や海へ出ているのは、たいてい老人だ。体の、どこが悪い、あそこが悪いというような会話は耳にしたことがない。愚痴っぽい話や、物事を他者の所為にする類の話は、まず、しない。
いつまでも太陽が顔を出さない天気を嘆いていたら、島の老人にいわれた。
「⑥自然には自然の都合というものがあるのです」
自然の都合が人間の都合と反対だということは残念なことだ。